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もりみちブログ

2018年12月28日

人知れず入れ替わっていた

テレビのクイズ番組で,徐々に変化していく画像を見ながら変化した部分を当てるというコーナーがある。目を懲らして見ていたのに,正解を見ると最初と最後ではまったく異なっているのに気づいていない。
私たちの身の回りの生きもの達でも、気づかないまま類似の他の種に入れ替わっている場合がある。

オオオナモミの果実

オナモミの実は誰も知っているだろう。秋の草むらで服にくっつく厄介者だ。ところがオナモミは西日本では急減している。四国では高知県レッドリスト2010で絶滅とし、徳島県レッドリスト2014と愛媛県RDB2014では近年の確認情報はなく情報不足(DD),香川県RDB2004では準絶滅危惧(Nt)としている。今でも普通に「オナモミの実」を見かけるがそれは外来種のオオオナモミなのだ。オオオナモミは北米原産で昭和初期に日本に渡来し、オナモミと競合しついに置き換わってしまった。四国に侵入したのは昭和20年代だが,全域に拡大したのは昭和の終り頃であろう。年配の人にとって子どもの時に見たのはまさしくオナモミであり、今、見るものはオオオナモミであるが、両種が酷似しているため、入れ替わったことに気づく人は少ない。

チャミノガ

小枝や枯れ葉をまとって木の枝からぶら下がるミノムシも同様だ。ミノムシを持ち帰り,ミノから幼虫を取り出して,毛糸やちぎった色紙の中に入れると色鮮やかなミノを作る。昔の子どもの遊びだった。その頃のミノムシとはオオミノガの幼虫のことだが,1960年代以降に外来のヤドリバエの寄生によって激減した。すでに愛媛県・高知県・徳島県では準絶滅危惧種に指定されている。今,ミノムシを思って見ているのは,多くの場合,ミノがちょっと小ぶりのチャミノガである。

イガラの繭


また刺されると痛いイラガも急減種である。今,私たちがイラガと呼んでいるのは,ほとんどの場合,1960年代以降にイラガと置き換わった外来種ヒロヘリアオイラガであり,幹に残った繭殻は見慣れた白い卵型だ。イラガは在来種で,繭には白地にくっきりとした黒い筋模様がある。今でも年に1~2度,街路樹などでイラガの繭を見つけることが,よくぞ残っていてくれたとしばし立ち止まる。
産経新聞四国版2018/12/28掲載(一部改変),hmatsui


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