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もりみちブログ

2018年6月5日

里山の記憶遺産

先週,鬼北町と松野町で,昔の暮らしぶり(おもに植物関係)の記憶の聞き取り調査をした。その際にゼンマイの綿を利用したことが聞き取れた。東北地方ではゼンマイの若芽についている綿毛を集めて,布団にしたり紡いで織物にしていたことが知られているが,四国ではそのような利用はないと思っていたので驚いた。
鬼北町興野々の人は祖母(明治17年生まれ)からゼンマイの綿を使っていたと聞いたことがあると言い,松野町奥内の人(昭和9年生まれ)は子どものときにゼンマイの綿で手鞠を作ったと話してくれた。
ゼンマイやワラビはカヤ場でたくさん採ったという。カヤ場はススキの原っぱのことで,どの集落にも裏山の中腹以上に点々とあり,藁葺き屋根や飼料・肥料の材料となることから雑木林以上に重要な価値があったと思われる。秋に稲刈りがすむとカヤ場に行ってカヤを刈り取り里に運び降ろす。草刈りされた原っぱには春になるとゼンマイやワラビが大量に生えて,それも採って干したり塩漬けにして年間の食糧とされる。ワラビの根を掘ってデンプンを採りそれを食べたこと(今のワラビ餅),ススキ原にはウサギなど獣が集まりそれをワナで捕まえたこと,薬になる草や食べられる木の実,川に木の汁を流して魚を捕まえたこと(魚毒),草の葉やタケノコの皮で雨合羽をつくったこと・・・
今回の語り部は80歳前後の方であったが,里山と人の暮らしの実体験を語れる人は年々少なくなるだろう。聞き取りのICレコーダーから文字起こししながら,里山の記憶は時間との勝負かなと感じた。hmatsui

松野町奥内 遊鶴羽


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