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もりみちブログ

2018年1月12日

ナンキンハゼの功罪

 ナンキンハゼは中国原産の落葉広葉樹で公園などに植栽されている。10月終りころに果実をつけ,やがて果皮が弾けると白い種子が顔を出す。11月半ばには葉が真っ赤に紅葉して人目を惹く。種子の表面(仮種皮)には脂肪分が多くハゼの実の代用としてロウソクの原料としても用いられた(ただしウルシ科のハゼノキとは異なりトウダイグサ科)。栄養分たっぷりの種子は野鳥の格好の食糧となる(生きものごよみ1/12)。
私の好きな街路樹の一つだけど,この樹木の繁殖力は極めて強いことが思わぬ問題を起こしている。
 松山市の北条鹿島は周囲約1.5㎞という狭い島だが,50頭以上の野生シカが生息しており,シカ食害による植生への影響も大きい。海岸の平地でも,クスノキ林など広葉樹林の林内でもシカの口の届く範囲の植物のほぼすべてがシカの食べない植物(忌避植物)である(2016年頃)。そのなかで有毒成分を含むナンキンハゼはまったくシカ食害を受けず生長している。見るとあちこちに低木や亜高木が見られる。
ナンキンハゼは過去の愛媛県のリスト(山本四郎1978など)に掲載されていないことから,愛媛県では近年(1980年代以降)に栽培種の種子が鳥散布で拡散し野生化したと思われる。しかし普通の林内では日当たりが悪く他の植物との競合もあり,なかなか生長は難しい。鹿島のナンキンハゼは過去40年間以内に侵入し,他の植物がシカ食害を受けことで,自らの分布を拡大していたのだ。
 このままでは鹿島の一部がナンキンハゼ林に変わるのではないかとも心配した。
 淡路島では実際にそうなっていた。ウバメガシ林皆伐地では本来,伐採地に生育するはずのアカメガシワ,タラノキなど先駆性樹種がシカ食害を受けて,結果的にシカの忌避するナンキンハゼ群落が発達したことが報告されている(石田・山名・小舘・服部2012)。
 ではシカで有名な広島県宮島ではどうだろうか。最近の論文(諸石・坪田2017)では,2013年に宮島でナンキンハゼを確認し,近年では100本以上にも拡大しているという。
 2017年春,鹿島のシカは取り逃した数頭を除き飼育施設に収容された。シカの食害圧がほぼなくなった鹿島では外来種を含めて多くの種が生育を開始している。日当たりを好むナンキンハゼの分布拡大を阻止できるだろうか,今後が興味深い。2018/1/12,hmatsui


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