morimichi

もりみちブログ

2020年3月10日

海上地区にて

3/9,渓谷で有名な東温市の滑川を訪れた。ここは平家の落ち武者が隠れ住んだと言われている奥深い地である。調査目的のタンポポは外来種がたった1ヶ所でしか見つからなかったが,タンポポがほとんどない事も成果であろう。
県道の最奥に海上(かいしょ)集落がある。高台から見下ろすとそこは一面の荒野であった。数年前に訪れた際にはまだ田んぼがあったように思うのに。

2020年3月


そこで過去の空中写真を調べると,1975年にはこの地区だけで棚田が200枚ほどあった。

1975年の空中写真。国土地理院ウェブサイト


しかし2017年には10数枚だけしか見えない(赤丸の部分)。

2017年の空中写真。国土地理院ウェブサイト

2014年頃の赤丸の部分。©2014namekawakeikoku.com


「滑川渓谷.com 」のHPでは稲穂が黄金色に実っていて,ここが最後の田んぼだったのだ。
そこも今では冬枯れのススキやセイタカアワダチソウで覆われている。所々,土が見える部分はイノシシが暴れたのだろう。

最後の田んぼもなくなっていた。2020年3月


農作物が1年以上作付けされず今後も作付けする予定のない農地を「耕作放棄地」というが,田んぼの場合,一端,耕作を止めると再び田んぼにするのは極めて困難である。代々受け継いできた田んぼに来年から田植えは出来ないと決めた無念さを感じる。
田んぼとともに水辺や畦畔の生きものも消え,しだいに人が去って伝承文化も技も受け継がれなくなり,やがて風景が変容していくのだろう。生物的にも文化的にも景観的にも多様性の消失である。

住む人のない住居


帰り道で「ほぼ滑川」に立ち寄った。無人の売店(良心市)である。ホウレンソウとかダイコンとかが安価で並べられていた。そこに作り手である地元の人の顔写真も添えられていて,元気そうな顔(たぶんお年寄り)がニコニコしている。また川向こうから賑やかな子ども達の声がする。滑川小学校跡地にできた「なめかわ清流の森」という野外研修施設だ。新型コロナで休校となって元気をもてあました子ども達がどこかの企画でここに来ているのだろう。
少し気持ちが軽くなった気がした。 hmatsui

「ほぼ滑川」の店内


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