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もりみちブログ

2019年11月27日

除草剤の塗布によるヨシの駆除

湿地ビオトープの管理上の課題の一つはヨシなどの高茎草本の拡大をいかに抑えるかである。比較的富栄養化した湿地では,年月の経過につれてカンガレイやヨシなど背の高い草本が優占することは自然のなりゆきであるが,結果的に多種の小さな植物が消えてしまい,単純なヨシ群落などになる。
愛媛県の天然記念物に指定されている今治の蛇池湿原でもヨシの拡大が進行しており,長い期間,毎年,多くの人を動員してヨシ刈りを続けている。しかし地上部だけを刈り取ることではヨシの拡大が止めることは難しい。
松山市和気町の海岸に隣接して小さなビオトープがある。このビオトープは海岸の後背湿地の整備に伴って,自生していた希少植物の保全のために8年ほど前に造成されたもので,ウラギクやシオクグなど県RDB種が移植されている。当初はヨシはなかったがその後,侵入して拡大し,希少種を被圧しており,夏に一度の草刈りをしているが分布範囲が徐々に拡大している。ヨシ群落の中や隣接地に希少植物が生育しているので噴霧器による除草剤の散布は出来ない。そこで管理する松山市と相談して,抜本的なヨシ群落の拡大防止・面積減少の一案として除草剤の直接塗布を試みた。
除草剤の塗布はまずナイロン手袋をしてその上から軍手をする。そのまま高濃度(20倍程度)に薄めた除草剤(ラウンドアップ)の入っているバケツに手を入れて軍手に除草剤を浸ませる。滴が垂れない程度に絞ってから,ヨシの葉を軍手で掴むようにして除草剤を葉面につける。実際に作業をしてみると,除草剤が垂れ落ちることもなく,ヨシ群落の中に生えているハマサジやシオクグに除草剤が付着することもなかった。
一週間後,ヨシは衰弱し始め,2週間後には地上部が枯れ始めた。80日後,地上部は枯れており,その根元ではハマサジなどが生育を続けていた。
根茎まで枯れていると今後のヨシ刈りの作業は必要なくなるが,それは来春まで待たないと分からない。また夏前に一度,ヨシの地上部を刈り取り,その後に生えた若葉に除草剤を塗布することがより効果的と思われる。
希少種の生育している場所で除草剤を使うことはタブーと思われがちだが,駆除対象の植物のみピンポイントで散布(塗布)できて,その結果,根茎まで枯らすことが出来るなら,毎年の草刈りで立ち入ることよりも希少種へのダメージが少ないものと思われる。2019/11/27,hmatsui

9/3,除草剤の塗布前。中央の水路の右側に塗布した。

除草剤と軍手

塗布,6日後

2週間後

80日後


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