morimichi

もりみちブログ

2018年2月6日

山を越える魚

面河ダムの用水を溜める,西条市上市の新池調整池(2014/10/14)


ため池の池干しで採れたブルーギル


池干しで採れたバス(大きい方)とギル


昨日,今日とダム関係の会議があった。そこで思ったこと。
ダムの役目の一つに農業用水の供給がある。野村ダム(国交省)から導水される南予用水や面河ダム(農水省)から導水される道前道後用水などだ。西予市や伊方町の段畑のミカン栽培の隆盛は南予用水があってこそと言っても過言ではないだろうし,道前道後用水にしても松山市,西条市など4市3町の計1万㏊を越える受益農地に水を供給している。雨の少ない愛媛県にとってダム・導水トンネル・調整池などは基幹的な農業水利施設としてきわめて重要である。
用水の価値を認めつつも,二つの問題が発生する可能性を思った。
その一つは水源であるダムに生息するブラックバスやブルーギルの外来魚が下流のため池や水路に運ばれることである。野村ダムにしても面河ダムにしても,ネット情報ではバス釣ポイントとして紹介されている。その稚魚が下流の調整池に運ばれて繁殖し,さらに下流のため池に拡散することはありえるだろう。かつて面河ダムから下流のため池に,そこには生息しないはずのヘビが流されてきたということを聞いた。バス生息地の拡大は人為的な持ち込みが原因と言われるが,用水経由による拡散も懸念される。バスやブルーギルなど肉食性の魚は,在来魚だけでなく多種の水生生物も食べるため,バスなどが生息する池の在来生態系が貧弱になる。
もう一つの問題は水源であるダムの生物が用水によって別の水系に運ばれることである。面河ダムは太平洋に注ぐ仁淀川の上流にあるが,用水は80㎞以上も離れた瀬戸内海に面した道前道後平野に導かれ,中山川水系や重信川水系に注ぐ。標高1000m以上の脊梁山地を越えることから「虹の用水」とも,愛媛県にとっては高知県からの分水であるから「感謝の用水」とも表現される。しかし淡水魚に詳しいS氏は「100万年も出会ったことのない生きものが山を移動して異なる水系で出会うことのリスク」「いったん交雑すると元に戻せない遺伝子の混乱」と指摘した。
ダムの利水の恩恵には感謝しつつも,生物多様性の面からの環境配慮も必要だろう。2018/02/06,hmatsui
※魚の写真は松山市内の池干し(2012/09/02)で撮影,ダム用水とは無関係です。


関連記事