morimichi

もりみちブログ

2019年6月30日

食文化を考える(1)

今朝のNHKのTVで,長野県伊那谷の「ざざむし」を放送していた。「ざざむし」とは川虫のトビケラ,ヘビトンボ,カワゲラの幼虫のことらしい。天竜川で12月からの2月の3か月間の漁期で,「ざざむし」を捕っている。捕った「ざざむし」は醤油と砂糖を加えて佃煮にするという。戦前,戦後と続いてきた「ざざむし漁」だが,後継者がいないとのことであった。近年「昆虫食」が話題になっておりその文化が見直されていることや先日読んだ面河山岳博物館研究報告の中にあった「愛媛県久万高原町におけるスズメバチ食文化-町民からの聞き取り 11」(矢野,2018)のこともあり,なかなか興味深い内容だった。

筆者は愛媛県の西南部の愛南町の海岸近くで生まれたが,イナゴの佃煮や蜂の子,父が話してくれたクサギの幹の中にいる幼虫を食べた経験はない。クサギの新葉の佃煮,ワラビの卵綴じ,ツワブキの葉柄の煮物,ハチクやマダケの筍の煮物などの植物食の経験はある。しかし,フキ,ゼンマイ,ウド,タラノキなどは食べたことはなかった。海に近かったので,むしろ,カサゴを釣って食べたり,アサリを採って食べたり,「クロニナ」(これはバテイラ,クマノコガイ(図1),ヘソアキクボガイ,クボガイ,コシダカガンガラなどの黒い色をした貝の総称),「シリダカ」(ギンタカハマガイ)や「ヨコメ」(アオカリガネエガイ),「ヨメノサラ」(ヨメガカサガイ,ばら寿司の具にしていた),「セイ」(カメノテ,図2),「ヒュウシメ」(イシダタミガイ,図3),「ハシリンド」(マガキガイ),「ナガレコ」(トコブシ)などを採って酢味噌で食べたりした記憶の方が多い。これは生まれ育った場所が海岸近くであったことによるが,私のふるさとの食文化はなかなか面白いらしい。食文化は地方によって異なっていてそこの自然や生物との関係があり,とても興味深いことが多い。だが,このような食文化を知る若い世代は少ないような気がする。若い世代もこのような自然の恵みを味わう機会をもってもらいたいものだ。

文献

・矢野真志,2018.愛媛県久万高原町におけるスズメバチ食文化-町民からの聞き取り 11,面河山岳博物館研究報告,8.

(2019/06/30)khashigoe

図1 「クロニナ」と呼んでいるクマノコガイ

図2 「ゼイ」と呼んでいるカメノテ

図3 「ヒュウシメ」と呼んでいるイシダタミガイ


関連記事