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もりみちブログ

2018年2月5日

庄大根と高縄ジビエ(2)

「庄大根と高縄ジビエの里めぐり」のもう一つの柱はもちろん、「高縄ジビエ」。ジビエとは、野生動物のお肉のことです。今回のエコツアーでは、「高縄ジビエ」の渡邉秀典さんに、野生動物を食肉として活用する取組を、スライドを使ってご紹介いただきました。

しまなみ海道に位置する今治市大三島では、ミカン畑にイノシシが侵入し、果実を食べたり、木を折ったりするなどの被害が拡大していました。畦や石垣なども壊されることがあるそうです。被害の防止を目指して、ワナの設置や狩猟によって捕獲が進められましたが、捕獲したイノシシは利用されずに廃棄されることがほとんどでした。

その状況を打開しようと、渡邉さんが代表となり「しまなみイノシシ活用隊」が発足。捕獲・解体・精肉・販売の技術とノウハウの構築に取り組んできました。

今では都市部のフレンチレストランの注文を受けて出荷するなど、高品質の食肉の提供が軌道にのってきたそうです。ミカンを食べたイノシシとあって、美味しい肉質になっていると考えられ、食味コンテストでも1位になり、評価が高まっています。さらに、地域おこし協力隊のメンバーも連携し、豚骨ならぬシシ骨ラーメンを開発し開業にこぎつけたり、皮を活用してスマホケースなどの小物を製作して販売するなど、活用の可能性を広げています。

北条地域においても野生動物による農業被害が増加しています。そこで、地元猟友会のメンバーらとしまなみイノシシ活用隊のノウハウを活かし、平成29年5月、食肉処理施設を開設。北条地域で捕獲した野生動物を「高縄ジビエ」として活用する取組が始まりました。

質の高い食肉にするためには、仕留めてから速やかに処理をする必要があることから、県内各所に小規模な食肉処理施設が設立されること、猟師さんと加工を担う人が密に連携すること、肉をできるだけ傷めない仕留め方をしてもらうことなど、体制の構築が必要であることを説明していただきました。

野生動物は農業被害をもたらす存在ですが、一方的に害をもたらすものと位置付けるのではなく、適切に食肉処理することによって、優れた食材・皮革などの恵みに転換していこうという、渡邉さんの熱意と実践の積み重ねに胸を打たれました。野生動物を食用にすることは、昔は必然的に行ってきたことですので、いわば昔ながらの取組ですが、新しいのは現代においては冷蔵・冷凍の技術や運搬が発達し、ITを活用して欲しい人とつながれること。都会でのニーズが高いので、ビジネスとしての可能性が大いにあることも説明していただきました。また、狩猟や解体の仕事に就きたいと希望する人材は、都市部の若者層に存在し、その人たちを呼び込んで若者のセンスを活かした展開が期待できるというお話しもありました。

お話しの後に食肉処理施設に移動し、実際にイノシシを解体する作業を見学させていただきました。11~1月くらいの野生動物は脂肪分が多く、質の高い時期とのこと。小さな包丁を使って丁寧に背骨を外していく様子に、食べ物として大切に扱う姿勢が伝わってきました。

食卓で肉をいただけるのは、だれかが食肉処理をしてくださっているのだと改めて認識。参加者のアンケートからも、「命をいただくという意味がよくわかり、食事をするときに感謝の心を持ちたいと思います」「よい勉強になりました」などの感想が多数記されていました。

庄大根と高縄ジビエ。いずれもこの時期が旬で、食材としての相性も抜群!庄大根+シシ肉のシシ汁をたいへん美味しくいただきました。そして、食べるということは誰にとっても日常なのに、食べ物が生産されている現場、担い手のご様子を知らないでいることを痛感しました。生産者の皆さんから、食を担うこと・自然に向き合う姿勢の真摯さが伝わってきました。

北条地域のエコツアーでは、人の暮らしと自然との豊かな関わりの現場を訪ね、地元の方にお話しいただくことを展開していきたいと考えています。かみしめているとあれこれ文章が長くなってしまいましたが、シンプルに楽しい機会ですので、ぜひお気軽にご参加ください!
ykurokawa


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