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もりみちブログ

2017年12月24日

川底に隠されたマツ材 木工沈床

木工沈床の組み立て中


組み立てられた木工沈床


砕石を詰めて補強する


埋め戻される前

 一級河川の重信川は普段の水量は少ないが,高低差の割りに河川長が短いため,降雨がつづくと一挙に増水して氾濫の危険が高まる。そのため重信川を管轄している国交省では古くから堤防強化の取り組みをつづけている。しかし平成7年の大雨では補強された護岸が崩れてしまった。激しい流れが護岸近くの川底を削り,護岸が足元から崩れてしまったのだ。そこで護岸基部の河床洗掘を防ぐ「根固め」という工事がつづけられている。
 先日,重信川下流左岸で「木工沈床」という根固め工の施行現場を訪れた。河川敷には、マツ丸太を組んで作られた一辺3mほどの立方体の木枠,数十基がずらっと並んでいた。丸太の径は25㎝ほど,樹齢は45年ほどだ。現場の人に聞くと一基の木枠に50本ほど使用するが,幹がまっすぐな丸太の入手は難しく,今回は長野産の材を使用しているという。
この木枠を5メートルほど掘り下げた川底に並べ,中に砕石を詰めて丸太で蓋をし礫で埋めもどすのだ。つまり木枠は川底の約2m下に沈められているので通常は見えない。それ故,木工沈床と言われる。
 根固め工にはコンクリートを使う場合が多いが、激流に洗われて沈床が露出した場合、流された礫の衝撃に対してはコンクリートよりも粘り強度の高いマツ材の方が勝っているという。またマツ材は樹脂(松脂)を含んでいるので沈水環境では腐りにくいという特性がある。数年前に70年間も川底に埋設されていたマツ材を見たことがあるが,内部はまったく朽ちていなかった。
 かつてマツ山は今よりははるかに広範囲に発達していた。1975年前後,愛媛県の植生図を作製したが,沿岸部の植生はマツ林と果樹園のみといっても過言でないほどだった。それは大昔から,里の人々はマツ林から燃料用の落枝や落葉をもち出していたが,その繰り返される人為的撹乱によって先駆的群落であるマツ林が持続していたのだ。
 しかし燃料がガスや石油・電気などに移行し人々がマツ林に立ち入らなくなると林内には広葉樹が生育して暗い林となり,最後は松食い虫(マツノザイセンチュウ)による松枯れによって瞬く間にマツ林が減少した。もうマツ林の利用価値はなくなったとさえ思われた。しかし重信川のような暴れ川では,マツ材による木工沈床という伝統的な工法が採用されており,今なおマツ材の価値が残っていることに安心した。2017/12/24,hmatsui


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