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六郎とトクサ
小田深山の獅子越峠をすぎて黒川沿いに入ると見渡す限りの森である。ネコヤナギの林の下にトクサが群生しているのを見て車を停めた。トクサはスギナと同じトクサ科のシダ植物で本州中部以北には自然分布する。西日本でも隔離的に分布するが自生か栽培の逸出かはっきりせず(平凡社:日本の野生植物シダ編),山本四郎(1978)は愛媛県内のものは逸出としている。すると人里遠く離れたこの地で誰かがトクサを栽培していたのだ。
少し歩くと山側に古い林道の入口があり,そこに「六郎谷」の標示があった。六郎は轆轤(ろくろ)の転訛だったとすると,ここにトクサが群生していることに合点がいく。
この谷には木地師が住んでいたのだろう。木地師とは奥山に住み,トチやケヤキなど広葉樹の大木を伐って轆轤で挽き,木地という椀や盆などの白木の器をつくる人だ。木地は最後に表面を磨いて仕上げるが,その際にはトクサ(砥草)を用いるという。トクサは表皮が硬く,煮て干したものは紙やすりの代用となる。
六郎谷は今では集落は消えてすべて植林となっているが,かつてここに木地師と呼ばれる木こり集落があったのだろう。轆轤は谷の水を利用した水車式のものだったのかも知れない。そんな想像を膨らましながらトクサの群生を見た。2018/4/1,hmatsui
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